昨年2003年から今年にかけボクシング界では色々な出来事が起こっている。
1)レノックス ルイスのヘビー級王者のままでの引退
2)ロイ ジョーンズのヘビー級制覇、苦戦、そしてKO負け。
3)フロイド メイウェザー、エリック モラレス、アセリノ フレイタス等スター選手の階級転向。
4)圧倒的強さを見せ付けるバーナード ホプキンス、日本の誇り徳山の安定政権
他にも色々と。

ジョー 小泉氏に言わせれば、「新陳代謝の激しいスポーツ」
浜田 剛史氏では、「戦国時代」
そして我がボクシング狂友SPA氏は、「連鎖反応」

たしか自分が初めて見た世界戦はレパード 玉熊の王座転落試合、その次が畑中 清初防衛失敗試合である。
そして初めて購入したボクシング マガジンの見出しは、「タイソン、ラドックを返り討ち 」である。

何をここで言いたいのか?ボクシングを見てきて10数年、この世界は約10年位で大変化、世代交代があるのでは?と言う事だ。
1993ー1994年も現在のような激動の時代だったと思う。

そこで「ボクシング10年」と言うタイトルで階級ごとの変動、中心選手の活躍、交代等をシリーズで追っていきたい。
ここ10年間、世界ボクシング界を牽引してきた選手の代表格はやはりロイ ジョーンズである。93年に現在3団体統一ミドル級王者バーナード ホプキンスに僅差判定で空位IBFミドル級王座を獲得(当時、私はジョーンズをあまり評価していなかった)。翌年、当時全階級最強の1人の呼び声の高かったジェームス トニーに大差判定でIBFスーパーミドル級王座を獲得してから評価うなぎ上り。その後3団体統一ライトヘビー級王座に君臨。昨年2003年にはヘビー級王座をも獲得。伝説的ボクサーの仲間入りをはたした。
同11月にライトヘビー級再転向。アントニオ ターバーの持つ王座挑戦、獲得なるも減量苦の影響からか内容は芳しいものでなく苦い王座返り咲き。そして先日のターバーとの再戦では、相性の悪さか衰えか、生涯初の屈辱的KO負け。
「超人」ロイ ジョーンズ神話も、終焉が遠くない事を感じさせられた試合であった。

さて、10年前にまさしく「最強」の男にも終焉が近づきつつあった。
そのボクサーは、「メキシコの伝説」フリオ セサール チャベス。本当に強かった。まさしく「戦う王者」であった。3階級制覇。デビューからの連続勝利、不倒記録「87」の衝撃的な数字に伸ばしていた。その「無敵」の王者にも年齢という衰えが忍びよっていた。
チャベスの「無敵のオーラ」を剥がしたのが、後に4階級制覇を成し遂げるこれまた「ボクシング史上に残るテクニシャン」パーネル ウィテカー。1993年9月サンアントニオ(パッキャオがバレラを破った地!!)でチャベスの突進を見事捌き切る。露骨な地元判定引き分けで勝利者の権利を逃したウィテカーだが、その後明らかにチャベスは違うボクサーに変貌した。
その「伝説」にとどめを刺したのがフランキー ランドール。それまで打倒チャベス候補には、ウィテカー、ジュニア ミドル(現スーパーウェルター)級のテリー ノリス、又は次世代のオスカー デラホーヤ、コンスタンチン チュー等が上げられていた。しかし「不倒男」を初めてダウンさせ黒星をつけたのは、チャベスより1つ上のランドールであった。1994年1月のチャベス生涯初のダウンは、私にとり今でも衝撃的事件である。

「超人」、そして「最強の男」も時代の流れには逆らえないものだと痛感さえられる「ボクシング 10年」。
ここ10年間、WOWOWエキサイトマッチで浜田 剛史氏が繰り返して同じ事を言ってきた、「まさしく戦国時代ですね」。ここ10年間に関して見ると私の意見は少し違う。ヘビー級をリング上から牽引してきたのはレノックス ルイスとイベンダー ホリフィールド。そしてリング外の話題を含めたマイク タイソン。
これから数年がまさしく「戦国時代」だと思う。ルイスは引退し、ホリフィールド、タイソン共に王座に返り咲く可能性はあるとしても実力NO.1にはもうなれまい。ここ数年、クリチコ兄弟次第でこの混沌状態に変化が見られると思う。

2004年4月、まさしくヘビー級タイトル戦のラッシュを迎えた。

WBO空位王座決定戦:ウラジミール クリチコ(ウクライナ)対レイモン ブリュースタ(アメリカ)結果:ブリュースターの5ラウンドTKO、新王者に。

IBF戦:チャンピオン クリス バード(アメリカ)対挑戦者 アンドュルー ゴロタ(ポーランド)
結果:12ラウンド引き分け、バード、2度目の防衛に成功。

WBA戦:チャンピオン ジョン ルイス (アメリカ)対挑戦者 フリス オケンド(プエルトリコ)
結果:ルイス、KO防衛

そしてレノックス ルイスの返上したWBC王座決定戦:
結果:ビタリ クリチコ(ウクライナ)がコーリー サンダース(南アフリカ)を8ラウンドで破り新王者に。



同じような状況が、厳密には9年前、1995年にあった。

3月
WBO戦:当時最強と言われていたリディック ボウ(アメリカ)が、王者ハービー ハイド(イギリス)を一蹴。王座再獲得。

4月
IBF戦:前年、20年ぶり世界王座に返り咲きを果たしたジョージ フォアマン(アメリカ)が、アクセル シュルツ(ドイツ)に大苦戦の判定防衛。

フォアマンが返上したWBA王座決定戦、ブルース セルドン(アメリカ)が、トニー タッカー(アメリカ)に8ラウンドストップ勝ちで新王者に。

前年、WBC王座をレノックス ルイスから番狂わせで奪取したオリバー マッコール(アメリカ)の初防衛戦。もう一人の中年の星、ラリー ホームズに僅差判定で初防衛に成功。

当時、ルイス、ホリフィールドとも王座には君臨していなかった。しかし実力は現行の王者よりは上と囁かれていた。
そしてその年の夏、鉄人マイク タイソンが4年ぶりのリングへ復帰。

当時は主役が王座に居座らなくとも存在していた、ルイス、ホリフィールド、そしてタイソンと。
現在2004年は主役をまず探すことが先決。
クリチコ兄弟、白人ホープ ジョー メーシ、シドニー オリンピック金メダリスト、 英国のオードリー ハリソンが話題の中心になると思う。

こうして見ると、「10年」前あたりからボクシングの国際化、「脱アメリカ」がこの最重量級で始まったのが分かる。
そして「10年」おきに歴史的偉業が達成されている。
1994年、フォアマンの45歳での王座返り咲き。そして2003年、ロイ ジョーンズ、元ミドル級王者のヘビー級制覇と。
「10年」後にはどんなドラマが見られるか楽しみである。
今回はヘビー級から1つ下のクラス、クルーザー級からスーパーミドル級までの3つのクラスの10年間である。

クルーザー級(190ポンドから200ポンドへ/86.18`>90.72`)
ライトヘビー級 (175ポンド/79.38`)
スーパーミドル級 (168ポンド/76.20`)

日本ではほとんど馴染みのないクラスたちである。
一言で言うと「地味なクラスたち」である。しかし、意外に面白いクラス、話題があったクラス達である。基本の忠実な欧州の選手(特にドイツ、イギリス)が幅をきかせているクラスである。
ここ10年間の動きを見てみよう。
1)ドイツ帝国の繁栄
2)それに続くスーパーミドル級の大英帝国
3)ロイ ジョーンズ王朝
そして
4)ジェームス トニー
である。

ドイツ帝国の繁栄は、これらのクラスに馴染みが我々日本人にとり薄いためそれほど感じる事が出来ないかもしれない。しかし誕生した王者たちを並べて見るとそれを感じる事が出来ると思う。

ヘンリー マスケ (IBFライトヘビー級王者、93年ー96年 10度防衛。帝国建設の立役者)

ダリウス ミハエルゾウスキー (WBO、WBA、IBFライトヘビー級王者。ポーランドからの輸入選手。94年、WBO王座獲得後3団体王座を統一。WBOだけを見ると23度の連続防衛)

ファン カルロス ゴメス (WBCクルーザー級、98年ー2001年。キューバ出身のこれまた輸入選手。現ヘビー級ランカー)

スベン オットケ (今年3月に無敗引退したIBF、WBAスーパーミドル級王者。98年に獲得した王座を21度連続防衛)

これらの記録を見ていただければ、ドイツのボクシング熱が分かると思う。


なぜかイギリスからは、ここ10年ほどスーパーミドル級に好選手を輩出し続けている。
ナイジェル ベン、クリス ユーバンクに始まり、ロビン リード、リッチー ウッドホール、グレン カットリー、スティーブ コリンズ(アイルランド)、そして現WBO同級王座を14度防衛、来月にもライトヘビー級王座挑戦予定のジョー カルザゲ。
こう並べて見ると、やはりカルザゲには他の選手たちにないスター性を感じる事が出来る。


もしロイ ジョーンズが同階級に出現しなかったら、本場アメリカでも影の薄いクラスたちだったに違いない。
天才ジョーンズの貢献度、超大。94年にIBFスーパーミドル級王座を獲得後は勢いを止めることなく2004年まで突っ走ってきた。ライトヘビ級王者時代は、マイケル スピンクス以来の、3団体統一王者に。昨年はヘビー級王座までも獲得。
まあ、アントニオ ターバー戦の苦戦、敗戦はヘビー級からの逆転向による減量苦、35歳という年齢との戦い、そしてターバー型のボクサーへの苦手意識である。この1つの敗戦によってジョーンズの同階級での評価、貢献度が落ちるとは考えにくい。


94年にIBFスーパーミドル級王座をジョーンズに奪われてから裏街道を走っていた、ジェームス トニーのクルーザー級での王座獲得、そしてイベンダー ホリフィールド撃退のニュースはうれしいものであった。
ほぼ10年間、ジョーンズの影で戦い続けたトニーもこの階級での「10年」に欠かせない役者である。

こうして見て見ると、意外に見所のあるクラスたちである。
これからの「10年」、欧州勢が勢いを衰えることなく、占領するであろう。
近い将来を見ると、ジョー カルザゲのライトヘビー級の活躍次第で話題が増えて行くと思う。もちろんアントニオ ターバー戦実現が同階級の大一番である。
オーストラリアのWBC暫定スーパーミドル級王者、ダニー グリーンもメジャー進出に期待。

良くも悪くも「死刑執行人」、バーナード ホプキンスと共にしてきた「伝統のミドル級」の「10年」であった。
このホプキンスの世界戦初登場は93年5月、スーパースター ロイ ジョーンズ戦。結果はジョーンズの小差判定。善戦者ホプキンスの張られたレッテルは、この同級の「10年」を示すように、「実力はあるが地味」であった。
世間の注目は、1年後に初防衛に成功、スーパーミドル級に去ったロイ ジョーンズと共にミドル級を去っていった。
その後、IBF王座をめでたく獲得したホプキンスに、世間は特に注目をあてる事はなかった。地道に防衛を重ねて行くホプキンスにも、対戦を期待される対抗王者が存在していた。
WBA王座を3度獲得、日本にも2度来日のウイリアム ジョッピー
そして
WBC王座2度獲得、長身のキース ホームズと。
他にも王者は存在した。しかしそれらを思い浮かべるとなると至難の業である。
世間の注目はいつ、この3王者が雌雄を決するかであった。
沈黙を打開したのが2001年、スーパースター フェリックス トリニダードの同級統一トーナメント参戦。
同4月に始まったトーナメントは、ホプキンスがWBC王座をホームズより吸収。そしてトリニダードがジョッピーよりWBA王座を獲得、誰しもが望むファイナル、「トリニダードーホプキンス」が実現に向かった。
そこで維持を見せたのが「本格ミドル級」ホプキンス。トリニダードを技巧で手玉にとり、同級最強の証明、そして3団体統一に成功。
その後はカルロス モンソンの打ち立てた14度同級最多連続防衛記録をも最新。現在までに18度の連続防衛に成功している。
そしてこの9月に、同級は新たな山を迎えようとしている。WBO王座を獲得、史上初の6階級制はを達成したオスカー デラホーヤが、ホプキンスを迎え、これまた史上初の「4団体統一戦」を行う予定である。
その大一番の結果はどうあれ、この「10年」間のミドル級はホプキンスと共に歩んできた。そして「死刑執行人」は歴史にその名を刻んだミドル級王者だと思う。

日本ボクシングのこの階級での「10年」も偉業が達成された。竹原 慎二の日本同級史上初の世界挑戦、獲得、そしてそれに続く保住 直考の挑戦は画期的な出来事だったと思う。日本から竹原、保住に続く人材発掘がこれからの「10年」の日本ボクシングの使命だと思う。

ミドル級に限らず、ここ「10年」のWBOの進展は目を見張るものがある。「10年」前には「4団体統一」考えられない事であった。
当時スター候補生だったジェラルド マクラレンも、WBO王座を返上し、WBC王座に挑戦したものであった。
王朝と言って差し支えあるまい。10年もの間世界の座を保持していたのだから。ダイスポ氏の「シーズンチケット 3」からの方ならご存知であろう。私がロペス信者ということを。

今回の10年はボクシング全17階級のうちの一番した、ミニマム(旧ストロー、105ポンド/47.63キロ)とそのひとつ上のライトフライ(旧ジュニアフライ、108ポンド/48.97キロ)である。
ロペスのキャリアを通じライトフライ級で戦ったのは3度のみ(キャリア前半は除く)。99年10月、ウィル グレグスビーからIBF王座を奪取し、その後2年間の間に数えた防衛回数は2度のみ。しかし「10年」の間、絶え間なく同級への転向が噂され、同階級の動向に影響を与えていた事は明白である。
もしロペスが存在しなかったら、本場アメリカのボクシング関係者に最軽量級をどう認識させる事が出来たか?不可能に近いと思う。
ロペスのボクシングはまさしく芸術的であった。2001年に引退するまで常に世界各紙の専門紙に「全階級を通じて最強のボクサーの1人」と認識させていた。自身のWBCミニマム級王座を防衛する事22度。約「10年」(90ー99)の間にこの最軽量級を本場中の本場ラスベガスに格上げさせた功績は大きい。進出当初は会場ガラガラ、テレビ中継なしの待遇を受けていた。しかし95年にはマイク タイソンの世界戦セミファイナル登場の偉業も (タイソンーフランク ブルーノ、対アラ ビラモア戦)。その試合では、今でも語り草になっている左アッパー1発KO.世界にリカルド ロペス、そしてミニマム級ありを示した。
「10年」前半期にはロペスにもライバルが存在した。ライトフライ級、軽量級初の100万ドルファイトを実現した 「小さな石の拳」マイケル カルバハル、そしてそのライバル ウンベルト チキータ ゴンサレス。
両者は計3度対戦。特に1993年の第1戦は、「ミニ ハグラー対ハーンズ」の絶賛を受ける。
カルバハル、ゴンサレスは絶えずロペスの対抗馬として決戦を期待されていた。その夢のカードは日を見ることなく終わった。もしロペス、カルバハル、ゴンサレスの三つ巴戦が実現していたら?軽量級の歴史に大きな1ページが加えられたと思う。

ロペス、カルバハル、そしてゴンサレス以外にも強豪は存在した。
タイの「小型カオサイ」、ラタナポン ソーヲラピンはIBFミニマム級王座を通算18度防衛。ラタナポンの実弟ラタナチャイは現WBOバンタム級王者でもある。
ゴンサレスを敵地でKOしたサマン ソーチャトロンはWBCライトフライ級王座を10連続防衛。
ロペスはサマン、ラタナポンにKOそれぞれKO勝ちしている事を付け加えておこう。
ロペスに生涯唯一のダウン、引き分けをあじ合わせた元WBAミニマム、現同ライトフライ級王者ロセンド アルバレスもいい選手だった。
日本からもミニマム級で星野 敬太郎(2度)、新井田 豊、ライトフライ級で山口 圭司 (それぞれWBA)を輩出。それに続く選手達を待機させている。
たしかに選手層はヘビー級などと比べると薄いかも知れない。しかし「10年」という歳月で見ると、その中から好選手を継続的に輩出していることが見れる。
これからはどうか?WBCミニマム級王者、初防衛戦を控えるイーグル京和(角海老宝石)、WBCライトフライの突貫小僧ホルへ アルセが楽しみである。もちろん新井田 豊もこれらに続く逸材だと思う。
これからの「10年」、ロペスの後継者探しがこの「王朝」後の指名だと思う。
ボクシング階級別に、ここ10年の変化を比較している「10年」、今回は日本でも伝統階級の呼び声高いフライ級(112ポンド/50.8キロ)である。
日本からは9人もの名王者達が誕生(白井、原田、海老原、大場、花形、大(小)熊、小林光二、玉熊、勇利)。
この階級は俗にいう「オリジナル 8階級」の一つである。歴史がある、そう、まさしく伝統の階級なのだ。
ここ10年間の同階級の動きを見てみよう。まさしく「古き良き階級」と化した感は見逃せない。もしかしたらこの階級こそ一番日の当たらない道を歩いているのではないか?と思うような脱落ぶりである。
名王者は定期的に輩出はしているのだが。
勇利 アルバチャコフ(WBC 9度防衛)、セーン ソープルンチット(WBA 9度)、ダニー ロメロ(IBF、スーパーフライも獲得、アメリカに同階級王座を43年ぶりにもたらす)、マーク ジョンソン(7度防衛、IBFスーパーフライ獲得、現WBOスーパーフライ)、マニー パッキャオ(WBC 1度、3階級上げ2階級制覇、バレラをも倒す)、ポンサクレック シンワンチャー(現WBC王者 9連続防衛中)、エリック モーレル(前WBA王者)等。
これらを見てもスター選手達は継続的に輩出されている。
ここで考えさせられるのは、1つの階級をどのようにすれば活性化する事が出来るかだ。
誕生した王者たちの出身地を見て見ると、アジア、そして中南米が主体となっている。ロメロ、ジョンソン、モーレルなど優れた選手は本場アメリカからも誕生している。しかし彼らの対戦者達は実力は備えていても本場では無名な選手達ばかり。アメリカの選手達もより大きな試合、報酬を求め転級、上の階級へと去って行く。
アメリカの専門紙等でも勇利などの評価は未だに高い。しかし本場のファンは彼の勇姿を1度も見たことがないことが大半だ (トグチ、あなた絶対負けるね)。

フライ級と言うのは時代の流れに取り残された階級なのかも知れない。
確かにスター選手を輩出しても、そのライバル育成までは達成されていない。ボクシングは相手、良きライバルがあってこそ人気を呼べるスポーツだ。フライ級の1つ下、ライトフライ級ではこの「10年」の間にマイケル カルバハルとウンベルト ゴンザレスという、軽量級初の100万ドルライバル対決を実現させた。小さくともファンを納得させる事は出来ると実証済みだ。ライバルなくしてファン、そしてビッグ マネー ファイトは動かず。
時が解決するのを待つしかなさそうだ。
しかしその「時」は案外早く来るかも知れない。シドニーオリンピック組み、ハワイのブライアン ビロリア、そしてフランスの金メダリスト、「星の王子様」ブラウム アスルムが世界間時かに迫っている。この2人の活躍次第では低迷する「老舗」に脚光が浴びる日が来るかも知れない。
「10年」、いやこれからの「5年」で階級復興を願う。


しかし日本の「伝統のフライ級」はどこへ行ってしまったのだろう?ここ最近は「スーパー」フライ級に伝統を奪われた形になっている。
97年に勇利が王座転落。最後の純日本人王者になると91年のレパード玉熊まで戻らなければならない。階級復興と共に日本人世界フライ級王者誕生を近い内に見てみたい。
次の「10年」間、フライ級再興を期待する。

久しぶりの「10年」である。
久しぶりと言う事でここで言う「10年」とは何か?おさらいと行こう。93年ー94年から2003年ー2004年の10年間を一つの枠と考え、その間に起った出来事、その10年間の比較などの個人的意見を述べさせて戴いている。

さて、今回は2階級をまとめて比較をさせていただく。その2階級とはウェルター級(147ポンド/66.68キロ)、そしてスーパーウェルター級(旧ジュニアミドル、154ポンド/69.85キロ)である。
ここ「10年」、常にボクシング界の中心的役割を果たしてきた階級である。いや、歴史的に見ても常に中核をなし続ける階級と言っていい。話題が多いクラスだけに、しかも2階級、数回にわけ転載させて戴く。
ここ10年間に活躍した主だった選手を挙げてみよう。

フリオ セサール バスケス(アルゼンチンの突貫ファイター。世界各地を転戦。WBAスーパーウェルター級王座2度獲得。1度目は10連続防衛)。

テリー ノリス (史上最強154ポンドの1人。WBC王座3度獲得。通算16度の防衛に成功。IBF王座をも統一)。

ロナルド ライト (現WBC/WBA統一スーパーウェルター級王者。今年3冠王に。以前WBO同級王座も保持)。

フェリックス トリニダード (プエルトリコの国民的ヒーロー。IBFウェルター級王座を20歳で獲得。以降15連続防衛。デラホーヤを下しWBCとの統一王者に。そしてスーパーウェルター級転向後WBA、IBF王座を順次併合。ミドル級をも制覇)。

オスカー デラホーヤ (史上初の6階級制覇達成。同2階級ではWBCウェルター級王座を2度、WBC/WBA統一スーパーウェルター級王座獲得)。

フェルナンド バルガス (激戦王。トリニダード、デラホーヤとの統一戦が記憶に新しい。王座はWBA、IBFスーパーウェルター級。来年、ミドル級で再起予定)。

シェーン モズリー (デラホーヤの天敵。元IBFライト級王者。WBCウェルター級、WBC/WBAスーパーウェルター級共デラホーヤから奪取)。

パーネル ウィテカー (ボクシング史上屈指のテクニシャン。WBCウェルター級を8連続防衛。あのフリオ セサール チャベスの神話を破壊。上記バスケスを破り4階級制覇。ライト級王座時には3団体を統一)。

アイク クオーティー (ガーナの鉄壁。WBAウェルター級王座7連続防衛。試合の少くなさが惜しまれる)。

凄いな。自分でも驚き。これだけ上げると、マヨルガも、フォーレストも、コーリー スピンクスも要らないな。
ウェルター級、スーパーウェルター(旧ジュニアミドル)級第2段。
今回は短めに。この階級からはいくつかの歴史的一戦も数多くこの「10年」間に行われた。

1993年 WBCウェルター級戦 パーネル ウィテカー対フリオ セサール チャベス (12回引き分け。チャベスの連勝記録ストップ)。

1999年 WBCウェルター級戦 オスカー デラホーヤ対アイク クオーティー (ダウン応酬の大激戦。デラホーヤ2ー1の判定、辛くも勝利)。

1999年 WBC/IBFウェルター級王座統一戦、オスカー デラホーヤ対フェリックス トリニダード (デラホーヤ、初黒星。この試合後、トリニダードが2ー0の判定で中量級の軸へ)。

2000年 WBA/IBFスーパーウェルター級王座統一戦、トリニダード対フェルナンド バルガス (これも大激戦。トリニダード12ラウンドTKOで2冠王者に)。

2003年 3団体ウェルター級統一戦、リカルド マヨルガ対コーリー スピンクス (スピンクス、2ー0の判定勝利。ウェルター級初の3冠王に)。

2004年 3団体スーパーウェルター級統一戦、ロナルド ライト対シェーン モズリー (ライト 3ー0。王座分裂後、初の3冠王へ)。

改めて思う。凄いな。大きな試合が目白押し。他にもまだまだある。しかし限がないのでこのへんで。
さて、ウェルター級、スーパーウェルター級の10年を振り返って見よう。大まかに分け、前半期、そして後半期に2分が出来る。今回はその前半、93年から99年までを振り返って見たい。
この前半期には、147ポンドと154ポンドクラスには現在見ない隔たりが存在していた。当時ジュニアミドルと呼ばれていた154ポンドの帝王テリー ノリスが伏兵キース ムリングスに敗れるまで、このクラスどちらかと言うと1階級上のミドル級寄りという印象を受けた。これは継続的な話題として、ノリスのミドル級進出が挙ぼっていたためだと思う。
今振り返って見るとこのスーパーウェルター級、2000年のフェリックス トリニダード同級侵攻あたりまであまり花がなかった(何度かノリスートリニダード戦の話題があったが実現せず)。
それに引き換えウェルター級は3強時代が長らく続いた。その3強とはWBC王者パーネル ウィテカー、WBA王者 ガーナのバズーカ、アイク クオーティー、そしてプエルトリコの天才児、IBF王者フェリックス トリニダード。
焦点はいつ、この3雄が対決するかであった。周囲は期待を込め、次代のエース トリニダード、もしくはクオーティーにベテラン テクニシャン、ウィテカー撃退を臨んでいた。
その3強時代に終止符を打った出来事が、オスカー デラホーヤの同級進出である。97年4月、論議を呼ぶ判定ながらWBC王者ウィテカーを撃退。4階級制覇達成に成功。その間、トリニダード、クオーティーは地道に防衛回数を伸ばしながらデラホーヤ戦実現へ向け交渉を続ける。
99年、ついにファン待望の同級でのスーパーファイトが実現して行く。
まずは2月、2つのビックマッチが。
WBA王座を無敗のまま剥奪されたアイク クオーティーがWBC王者デラホーヤに挑戦。両者ダウン応酬の大激戦の末、2ー1の判定がデラホーヤに。
IBFを通算15連続防衛まで伸ばすトリニダードは、これまでのデラホーヤをもっとも苦しめたあのパーネル ウィテカーと対戦。実力者同士だけに拮抗した勝負が予想されていた。しかし蓋を開けて見ると、トリニダードがダウンを奪い大差判定勝利。ブランク明けながら4階級制覇の名王者を退け、ファンはデラホーヤ対抗馬の筆頭にトリニダードを挙げる。
スーパーファイト ファイナルはこの年、9月に実現。多くのファンは伝説の「レナードーハーンズ」の再来が見れるのではと期待。
真剣勝負の世界、期待はやや裏切られる技術戦に終始。最後まで攻撃姿勢を止めないIBF王者トリニダードに2ー0の僅差判定の軍配。WBC王座との2冠王に。
この勝利とともに今後、トリニダードを中心としたスーパーファイトが実現。そのスーパーファイトは階級を1つ上げ、スーパーウェルターで。
トリニダードがウェルター級征服間、スーパーウェルター級でスター選手が成長、トリニダードを待ち受ける格好に。
まずフェルナンド バルガスが1998年12月、IBF王座を歴戦の雄、ヨリボーイ カンポスから奪取。それに続き1996年アトランタ オリンピック 金メダリスト デビット リードがWBA王座を翌年3月に獲得。トリニダード襲撃へと準備が着々に進められて行く。そしてこの両雄は2000年、トリニダードと順次対決へ駒を進める事になる、
現在の王者を見てみよう。
WBA/WBCスーパーウェルター級、ロナルド ライト
WBA/WBC/IBFウェルター級、コーリー スピンクス
プラス他3王者

何時の間にやら、地味な選手がトップを張るように。
バルガス、デラホーヤ、リカルド マヨルガはミドル級転向。トリニダードもミドル級で再起予定。モズリーも11月にライトとの再戦に臨むが、不利の予想。

2004年8月末現在に比べ、2000年、前世紀最後の年は凄かった。トリニダードのスーパーウェルター級での活躍は正に圧巻。同年3月にWBA王座を金メダリスト、デビット リードから獲得。指名挑戦者ママドゥ チャムを一蹴し、12月にIBF王者バルガスを撃鎮。バルガスはがんばった。しかし、巷で言われるような激戦ではなかったように思える。トリニダード、ダウンを奪われるが終始バルガスを圧倒。計5度のダウンを奪い、12ラウンドTKO勝利。
この試合を見れば明白である。デラホーヤーバルガス戦はまさに拮抗、激戦であった。何が明白かというと、どれだけトリニダードが同級で充実していたかを。
私がNO.2に指名するデラホーヤのその間の動向は? WBCウェルター級奪回、WBC/WBAスーパーウェルター級統一王者に。しかしモズリーに2連敗。体格も徐々に肉ずきがいい体に(締まりがない)。
もし、トリニダードがミドル級に転向せず同階級に留まっていたら、今でも王座に君臨していると思う。ライト、モズリーの出る幕ではない。
それだけトリニダードは同級で充実していた。
「10年」全体を通じてトリニダードが中心だった気がする。デラホーヤを破るまではやや2番手に落ち着いていた。しかし彼が存在し続ける事によって、同2階級に軸、話題が終始存在した(97年のノリス戦が1例)。
たしかにデラホーヤは集客力が凄まじくある。自他共に認めるスーパースターである。しかし、安定度、威厳力は同2階級で兼ね備えていなかった気がする。

今後もこの2階級では常時、ボクシングが存在しつける限り好選手を輩出し続けるであろう。しかし上記のように、スター選手がこぞってミドル級に転向を声明しているだけに、しばらくは地味な(2つの)クラスになるかもしれない。
WBAが「スーパー王者」を新設して以来、王者水増しの感が否定出来ない。逆に言えば、それだけ王座挑戦の可能性が増えたことになる。
日本からはスーパーウェルター級で上山 仁(92年)、ウェルター級で尾崎 富士雄(89年)以来世界挑戦すらない。次の「10年」間にせめて同2階級での世界挑戦者を輩出してもらいたいところである。


さて4期に分けてお届けしたボクシング 10年 ウェルター、スーパーウェルター級編はこれにて終了です。いかがだったでしょうか?

Corleone

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